「男と女の狂騒曲」というセンス、あるいは昭和の大名盤

あまぐも
ちあきなおみ 1978

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 あんまりロックではないけれど、大好きな一枚です。このアルバム、ミッキー吉野のアレンジもいいし、ゴダイゴ(タケカワユキヒデを除く)が手堅いバッキングを披露しています。それ以上に良いのが岸本博のアレンジです。この人もゴダイゴ人脈のようです。

 ちあきなおみは喝采ばかりが取りざたされますが、船村徹と一緒に良い仕事をしており、矢切の渡しの初演は彼女です。もちろん船村は矢切の渡しについては彼女の歌唱が最も時分のイメージに合っていると述べています。

 彼女が表舞台から去って十数年が過ぎてしまいましたが、彼女の作品はそのほとんどが現在でも入手可能です。普通、表舞台から消えて十年もたっていれば旧譜はほとんどが廃盤になってしまうということを考えれば、いまだにボックスセットが売れ続けている彼女の人気の高さは驚異的なものと言っても良いでしょう。

 その魅力は、彼女の歌唱力の高さと、表現力の豊かさに他なりません。うたを極めようとして最後にはファドにたどり着いた彼女の歌唱力の確かさは言うまでもありませんし、その情念を歌わせたら、右に出るもののいない表現力もまた然りです。もちろん、ただただ濃い情念を垂れ流しにするだけでないのは言うまでもありません。

 このアルバムはそんな彼女の作品の中でも、もっとも情念が渦巻いているものではないでしょうか。このアルバムで、彼女は友川かずきと出会っています。ぶつかりあう二つの個性と個性、情念と情念は、むしろどろどろと溶けて渦巻き、聴いているほうが飲み込まれてしまいそうです。友川の担当したB面の1曲目は「普通じゃない」、あんたら二人が普通じゃないやん!とつっこみを入れたくなるほど(w)

 アルバムの最後を飾る名曲夜へ急ぐ人は、かつて紅白歌合戦で大晦日のお茶の間に流れてきたことがあります。手招きしながら、誘うように歌われる、人の心の奥底を無理矢理のぞきこませるかのようなその歌。歌い終えたときに白組の司会者が「気持ち悪かったですね、次いきましょう」と言ったとか言わなかったとか。先日その時のうたをNHKの特番で見る機会がありました。いや、こういうものを公共の電波にのせては行けないと思いました。ほんとに。

 個人的な嗜好は抜きにしても、これは昭和を代表する大名盤だと思います。ただしA面とB面はまったく違います。A面は川島英五さんです。こっちもまぁ、情念は情念なんですが友川とはベクトルが正反対なので、気をつけてください。
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by bow1965 | 2006-05-15 21:57 | 〜80年代 日本のロック
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