人の心の奥底に訴えるには、自分も心の奥底から訴えなければならない

春香歌
安淑善 2003

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 韓国のパンソリです。韓国の伝統芸能であるパンソリは、現在この春香歌(伝)のほか、水宮歌、フンボガ、赤壁歌、沈清歌の四曲しか伝わっていません。水宮歌とフンボガは説話を題材としたもの、赤壁歌は三国志に題をとったものです。沈清歌は親孝行な娘の一代記です。

 さて、今回のテーマである春香歌は、烈女春香の物語です。中央から来た官吏の息子夢龍に見初められた春香は、契りを交わしますが、その後夢龍は父の異動と科挙の試験のために、中央に戻っってしまいます。春香は新しくかの地に赴任した官吏に言い寄られ、これをはねつけた春香は牢獄につながれてしまいます。一方、夢龍は科挙の試験を主席で合格し、密使の大役を授かります。そして、赴く先は言わずと知れた春香のまつ思い出の地!しかし、春香はそんなことはつゆ知らず、獄中で夢龍を待ち続けます・・・・
 クライマックスは、園遊会の日。まさにその宴の余興に春香が獄門にかけられる、その前の晩、春香の前にあらわれたのは、襤褸に身をやつした夢龍!夢龍のみすぼらしい姿を見て、春香は命運尽き果てたかと、ハラハラと涙をこぼすのですが・・・・・

 もともとパンソリは口伝であったと見え、同じ曲目でも細部は異なるようです。それぞれの伝承者が脚色し、時流を織り交ぜながらのばしたりちぢめたりしたと言われます。そんな中でも春香歌はもっとも長いもので、今回の安淑善のバージョンはCD6枚組となっています。およそ6時間にわたって、パンソリを歌いつづけるのは技術的にも体力的にも困難であるため、通常はハイライトのみを演奏するようです。

 パンソリは、歌唱による芸能ですが、厳密には一人芝居つまり演劇になります。実際には扇子を使い、身振り手振りを交えながら歌われるもので、浪曲に誓い印象を受けます。
 伴奏にはプクと呼ばれる太鼓が使われます。太鼓には歌の行く先を地ならしする大切な役目があり、技術もさることながら、歌手との相性も重要なようです。

 もともと私が韓国に興味を持ち始めたきっかけはパンソリのすばらしさに触れたことです。もともとパンソリは韓国のもっとも重要なメンタリティである恨(ハン)と直結した芸能です。恨の説明は私には到底出来ませんが、心の奥底に、長い長い時間をかけて降り積もった澱のようなもので、さまざまな感情が複合した、すべてを受け止めるものだと言う人もいます。

 きっと私は、いつか恨が理解できるその時まで、韓国に憧れつづけることでしょう。
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by bow1965 | 2006-06-01 20:35 | 民族音楽/シリアスミュージック
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