日本的な・・・

三つのウソと5時の鐘
CINORAMA 1994
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 頭脳警察のオリジナルメンバーであるトシことパーカッショニスト石塚俊明のグループである。元々トシは、音楽的には頭脳警察向きではなく、有名な三里塚でも灰野敬二のロストアラーフを横目で見て、あのような自由な音楽をやりたいと思ったそうである。これはそんな彼の初のパーカッションソロアルバム「風の闇−らィさッの打楽 」に続く、自身のバンドとしてのデビューアルバムである。

 たとえばタージ・マハル旅行団や四人囃子を始め、友川かずきとピップエレキバンドや三上寛、遠藤賢司などとの共演からもわかるように、彼のパーカッショニストとしての資質はオールジャンルというよりもノンジャンルである。ロックでもポップスでもない、トシのパーカッションは、不思議なリズムに満ちている。

 このアルバム自体も不思議な、そして不気味な魅力をたたえている。パーカッションと訥々とした女声、豊かなチェロの響き。それらが相まって、まるで古い映画を見ているかのような音像が広がってゆく。その表現は音の大小・高低だけではなく、音の濃淡による東洋的な遠近法が用いられている。もちろん、それは意識して出来ることではなくて、雑食ともいえるトシの音楽への多様なアプローチがもたらした奇跡的なセンスの為せるわざであろう。

 本質的に夜(というよりも宵闇というべきか)に属する、中世ヨーロッパの宗教音楽にも似た静謐さと、いわゆるレコメン系にも比すべき前衛性を孕んでいるその音楽は、「セミクラシック」と評されるほどシリアスであるとともに、ユーモラスである。時に奔放に、ときに理知的に、時に力強く時に儚く。刻一刻と表情を変えるその音楽を、私たちは固唾をのんで見守るほかはない。

 これは日本ではかつて生まれることの無かった極めて日本的な音楽。音楽的な方向性はちがうけれど、たとえば向井千恵の率いるChe-SHIZUや、Charles HaywardのCAMBERWELL NOWあたりとちかい肌触りをもつ。
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by bow1965 | 2006-08-19 18:17 | その他の音楽
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