民族の血脈

アルタイのカイ
ボロット・バイルシェフ 2001

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アルタイ共和国のホーミー(ホーメイ・コーメイ)の歌い手である。ホーミーとは同時に二つ以上の音を出して歌う技法で、咽喉~口腔~鼻腔~頭骨を共鳴させて高周波を増幅し、倍音を重ねていく技術(多分)である。現在、ホーミーはモンゴルのものが有名であるが、その発生はアルタイであったという。風が岩の割れ目に吹き込んだときに出る音を模したものであるともいわれ、風土とは切っても切れないものであるらしい。

ボロットはホーミーのみならず、地鳴りにも似たきわめて低い音を出すカルクラー、口笛に似た甲高い声を出すスグットをも習得している。そしてその三つの技術を組み合わせておこなうのがカイと呼ばれる伝統歌唱法なのである。そのカイによって歌われる歌はオチバラと呼ばれる英雄叙事詩である。これはアルタイの出自と歴史を4行2連のウルゲルという詩形式で語るもので、伴奏にはトプショールと呼ばれる2弦の撥弦楽器が用いられる。


淡々と、そして朗々と、失われた歴史と女神の行く末を歌うその声はどこか草原を思わせ、美しくももの悲しい。声は大空を飛び、虹をわたり、過去と現在を行き来する。見え隠れする神秘と真実は、やはり民族の伝統と誇りがあってこそなのかもしれない。

この歌の中に、いまも神話が息づいている。それは決して安直なノスタルジーではなく、しかし私たちにあるはずのない太古の記憶を呼び覚ますかのようである。
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by bow1965 | 2007-05-17 19:17 | 民族音楽/シリアスミュージック
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